神野正史

ナウル共和国とは、オーストラリアとハワイの間、太平洋の南西部にある21平方kmしかない小島にある共和国であり、世界でも3番目に小さな国連加盟国です。そこに住む人々は古来、漁業と農業に従事して貧しくもつつましく生きる“地上の楽園”でした。 しかし19世紀、太平洋の島々がことごとく欧米列強の植民地にされていく中で、ナウルの“楽園”もまた破られることになります。そして、1888年にドイツの植民地になってまもなく、この島全体がリン鉱石でできていることが判明しました。 リン鉱石とは、数千年、数万年にわたって積もった海鳥のフンが、珊瑚の石灰分と結びついてできたもの(グアノ)で、肥料としてたいへん貴重なものでしたから、19世紀後半から採掘が始まりました。 やがて第二次世界大戦を経て、1968年にようやく独立を達成すると、それに伴ってリン鉱石採掘による莫大な収入がナウル国民に還元されるようになります。 その結果、1980年代には国民1人当たりのGNP(国民総生産)は2万ドルにものぼり、それは当時の日本(9,900ドル)の約2倍、アメリカ合衆国(1万3,500ドル)の約1.5倍という世界でもトップレベルの金満国家に生まれ変わりました。医療費もタダ、学費もタダ、水道・光熱費はもちろん税金までタダ。そのうえ生活費まで支給され、新婚には一軒家まで進呈され、リン鉱石採掘などの労働すらもすべて外国人労働者に任せっきりとなり、国民はまったく働かなくても生きていけるようになります。その結果、国民はほぼ公務員(10%)と無職(90%)だけとなり、「毎日が日曜日」という“夢のような時代”が30年ほどつづくことになりました。